【国内鉄道旅】JR東海交通事業城北線 JR東海所有路線なのにJRではない 名古屋都心部にあるローカル線

はじめに

今回は2025年初春に乗車したJR東海交通事業城北線を紹介します。城北線はいろいろ奇妙な鉄道路線です。こちらの路線に関しては、最初から辛口に解説させていただきます。

JR東海交通事業城北線は、JR東海が所有(第一種鉄道事業者)、JR東海交通事業が運行しています(第二種鉄道事業者)。

JR名古屋駅の隣駅である東海道本線枇杷島駅から中央本線勝川駅の間(約11km)を結ぶ非電化複線路線です。かなり都心部を走る鉄道なのに非電化ですし、基本的に1時間に1本しか運行していないので複線である必要もありません。

JR東海の直営でもなく、子会社のJR東海交通事業が運行を担当しています。JR線の運賃体系とは独立しているので、JR線から乗り継いでも初乗り運賃が発生しますし、そもそも運賃単価がかなり高く設定されています。

JR東海の運賃体系では11kmだと240円です。JR東海交通事業で枇杷島ー勝川間を乗車すると450円もかかります。これだと、名古屋駅経由で乗車した方が340円と安くなります(19km)。JR東海交通事業は運行本数も少ないし、勝川駅の乗り換え問題(後述)もあるので、沿線在住者以外は乗車する理由が難しい路線です。

本当のところはわかりませんが、国鉄からJRに移管した際にいろいろあったようで、JR東海がいろいろ渋っているのかもしれません。

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JR中央本線 勝川駅で乗り換え

JR勝川駅からスタートしたいと思います。

JR勝川駅の上下線ホームの間に、線路2線分のスペースがあります。城北線の発着、中央本線への乗り入れを考慮して設計されたのだと思いますが運用されていません。

城北線とJR中央本線の線路はつながっていません。城北線勝川駅はJR勝川駅から500mくらい離れていて、乗り継ぎに10分以上かかるため城北線集客の妨げになっています。

JR勝川駅から城北線駅に向かいましょう。2階改札階から1階に降りて、北口側に出ます。

外に出たら左折して、線路沿いを東方向に歩いていきます。

駐車場に突き当たるので、右側の道に迂回して駅を目指します。

城北線の高架が見えます。中央本線の手前で途切れていますね。上に昇る歩道があるので、そちらを昇ります。

高架に昇ってもまだ歩きます。真夏は苦行ですね。

ようやく到着です。1面1線のホームで、改札はありません。

JR勝川駅の高架化に際して、どうして城北線をJR線駅構内まで入れなかったのか理解に苦しみますね。この500mをけちったために、城北線の未来図が大きく悪化していると思われます。

駅からJR勝川駅側の線路は車止めが設置されています。

車両が1台駐留されていました。

ホームから東側を望みます。線路は途中で複線になります。電化していないので架線はありません。

駅票はJRではなくTKJ(JR東海交通事業)になっています。

勝川駅から枇杷島駅へ

枇杷島方面から列車がやってきました。折り返し枇杷島行きになります。日中は1時間に1本しか運行していません。都会の高架鉄道なのにまさにローカル路線です。

改札がないワンマン運行なので、乗車時に整理券を取る必要があります。ちなみに、交通系ICカードは利用できません。

車両はキハ11形300番台1両編成です。JR東海交通事業は2両(2編成)所有していて、1両(キハ11-302)は勝川駅のJR勝川駅側に置かれています。今回乗車したのはキハ11-301です。気動車で、客席はクロスシートとロングシートがあります。

枇杷島側の右手側に部屋があります。本来のJR東海キハ11形だと、トイレになる場所ですが、利用できなくなっています。運行時間が短いので、たしかにトイレは不要かもしれません。

出発しました。城北線は(日中は1両で運行していますが)複線なので、進行方向右手に線路が見えます。高架路線なので、春日井市と名古屋市の街並みを見下ろします。

高速道路に並走し、名鉄路線をいくつか乗り越えながら進んでいます。有人駅はありませんが、小田井駅の西側100mくらいの場所に本社があり、そこで定期券等が購入できるようです。

約16分くらいで終着駅の枇杷島駅に到着です。

枇杷島駅でJR線に乗り換え

枇杷島駅は地上駅で、JR東海道本線と構内が共通になります。

降車時に、降車証明書が渡されます。枇杷島駅から出る場合は、改札機にこちらを通すと構内から出ることができます。

枇杷島駅の改札は高架上にあります。

枇杷島駅構内でJR東海とJR東海交通事業と線路がつながっています。ホームは2面4線(JRホームが東側、城北線ホームが西側)ですが、東海道本線は複々線になっていて、城北線ホームの西側にもJR線路があります。城北線はJR線に挟まれた感じになっていて、枇杷島駅を出発した城北線の列車は、途中でJR線を高架で乗り越えて東方向(勝川駅方向)に向かいます。

枇杷駅で構内が同じなので、城北線からJR線に乗り換えるのは容易です。JR線と構内を共有していますが、城北線からJR線に乗り入れるダイヤは組まれていません。私は東海道本線に乗り換えて、名古屋駅に向かいました。

JR東海交通事業城北線の不思議

鉄道の所有者、運営者は法律でかなり厳格に定められています。たとえば、能登半島の「のと鉄道七尾線(穴水~七尾間)」で見てみましょう。

●穴水ー和倉温泉間
・のと鉄道 第二種鉄道事業者(路線を借りて自社の列車を走らせる)
・JR西日本 第三種鉄道事業者(自社の路線を他社に貸している)
●和倉温泉ー七尾間
・のと鉄道 第二種鉄道事業者(路線を借りて自社の列車を走らせる)
・JR西日本 第一種鉄道事業者(自社路線に自社車両を走らせる)

同じ七尾線内でも、きっちり区切って鉄道事業者を区分しています。

土地・線路・駅舎 車両所有・運行
第一種鉄道事業者 自社→貸付も可 自社 第二種に線路貸付もできる
第二種鉄道事業者 他社からレンタル 自社 第一、三種から線路を借りる
第三種鉄道事業者 自社→貸付 所有しない 第二種に線路貸付が必要

ただ、第一種鉄道事業者と第三種鉄道事業者の区分はあいまいなところも多いようで、第一種鉄道事業者なのに自社運行していない路線もあります。

自社運行しない第一種鉄道事業者
●JR東海交通事業 城北線
・JR東海 第一種鉄道事業者なのに運行なし
・JR東海交通事業 第二種鉄道事業者として運行
●嵯峨野観光鉄道 嵯峨野観光線
・JR西日本 第一種鉄道事業者なのに運行なし
・嵯峨野観光鉄道(JR西日本子会社) 第二種鉄道事業者として運行
●大阪メトロ中央線 夢洲ーコスモスクエア間
・大阪港トランスポートシステム(OTS) 第一種鉄道事業者なのに運行なし

・大阪メトロ 第二種鉄道事業者
●JR貨物の一部 <例>浜松町駅~東京貨物ターミナル駅~浜川崎駅
・JR東日本 第一種鉄道事業者なのに運行なし
・JR貨物 第二種鉄道事業者として運行(浜松町駅~東京貨物ターミナル駅は休止中)

城北線は第一種鉄道事業者が鉄道を運行しない稀有な路線です。

JR貨物の場合、民営化時の約束もあっての現状ですからわかりますが、他の鉄道会社はよくわかりませんね。第一種鉄道事業者なのに運行しないことがOKなら、鉄道事業者を分類する意味もなさそうな気がします。

鉄道事業者は鉄道事業法などの関連法規で規定されますが、第一種鉄道事業者が鉄道運行しない場合の規定あるいは罰則規定はないようです(私は法律が専門じゃないので間違っていたらすみません)。

第一種鉄道事業者は申請時に運行計画も申請が必要ですし(鉄道事業法第4条)、運行しない場合は休止届が必要です(鉄道事業法第28条)。休止届は原則1年以内しか有効ではありません。休止届は廃止届と違って公示されないのでどうなっているのかわかりません。

JR東海が第一種のままなのは、JR線への乗り入れや直営列車の運行も考えてはいる(あるいは考えているふりをしている)のでしょうか。架線がないので、JR東海の列車が乗り入れることが難しく(JR中央本線もJR東海道本線も電化区間です)、JR東海交通事業の列車がJR東海に乗り入れる方が現実的です。

城北線はJR東海直営ではないので、乗車料金がべらぼうに高く設定されています。そして運行本数が少なく、勝川駅での乗り換えが不便です。JR線への乗り入れもありません。総じて、JR東海は城北線は利用しないように誘導しているようにも見えます。将来の展望が見えませんが、本音は廃線にしたいんじゃないでしょうか。

まとめ

2025年初春に乗車したJR東海交通事業城北線の紹介でした。都会の真ん中にあって高架線路、複線路線なのに、気動車でローカル線で運賃が高く本数が少ない、第一種鉄道事業者が運行しない、ほんとうに珍妙な鉄道路線です。

今回はおもいっきり辛口になってしまいました。JR東海のやる気のなさ全開の路線です。せめて勝川駅の乗り換え改善くらいしないと、利用者が少ないから本数を増やせないと言っても、言い訳に聞こえてしまいます。

鉄道で継続が難しいなら、速達性を求める路線でもないので、バス運用(BRT化)も視野にしてよさそうです。まあ、JR東海もプロなのでいろいろ検討した結果の現状かもしれません。

JR西日本で2019年に新設されたおおさか東線は大和路線(関西本線)を迂回させて有効利用しています。城北線も同じように運行すれば、沿線に住宅地が多いので利用客を増やせそうですが残念です。

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コメント

  1. パスクッチ より:

    城北線の問題は、この線路が鉄道建設公団(現 鉄道建設・運輸施設整備支援機構)により、有償貸付線であるCD線として建設されたことが原因です。
    JR東海はこの線の貸付料を2032年度まで毎年支払う義務を負わされていて、しかもJR東海の手によって電化や線路強化などの設備改良を行ったり利用客が増えて黒字になったりした場合、貸付料が値上げされるという理不尽な条件を付けられているそうです。
    つまり下手に利便性を上げて利用客が増えると困るわけです。
    もともとは貨物線として中央線から名古屋を通らずに東海道線大阪方面へ、あるいは中央線から東海道線東京方面や関西線へスルーで行けるようにするために計画されたのですが、貨物需要の減少により現状のままで充分ということになって中途半端な形で工事が終わってしまいました。旅客営業を行なうにしても、都市規模の小さい名古屋では外周部相互間を行き来するような需要は非常に少なく、かといって需要を喚起するために改良工事を行なえば、貸付料がアップします。
    そのため、少なくとも貸付料の支払いが終わる2032年度までは、このまま何もせずに放置すると思われます。

    ちなみに、いわゆる整備新幹線として建設された区間の最高速度が全て260㌔なのも同じ理由です。ただし東北・北海道新幹線は、貸付料の値上げがあってもスピードアップ効果の方が大きいとみて、札幌延伸時には改良するようですが。

    • RTW-tabizuki より:

      パスクッチさん

       移管時の「いろいろ」を詳細に解説していただきありがとうございます。
       JR東海としては面倒な契約なのでへそを曲げているのでしょうが、東海道新幹線をまるっと引き継いでいるだけでも、JR四国や北海道からみれば十分優遇されているように見えるような気がします。沿線顧客サービスとしてもどうなのかなあと。まあ、株式会社なので、最大限利益を追求する姿勢は必要なのかもしれません。

       またの訪問をお待ちしております。