【国内鉄道旅】日本一短い鉄道の鉄道事業者は和歌山県 南海和歌山港線と和歌山港駅

はじめに

今回は、2022年春、南海電鉄和歌山港線の旅です。

日本一短い鉄道シリーズの第3弾です。ここまで、第1弾で「日本一短いローカル私鉄」、第2弾で「日本一短い鉄道」を紹介してきました。今度は、「真の日本一短い鉄道」を紹介させてもらいます。

南海電鉄は大阪と和歌山を結ぶ2路線(南海本線・高野線)を中心に、関西空港線などの多くのネットワークを持っています。日本一短いという言葉は全くそぐわない鉄道会社です。

日本一短いというのは、鉄道路線保有距離が日本一短いということ。鉄道会社には、路線の所有と運営を実施する「第一種」、運営のみをして路線を持たない「第二種」、路線を所有するだけの「第三種」があります。

第一種で路線が最も短い私鉄が紀州鉄道(和歌山県)の2.7kmで、最も短い第3セクターが芝山鉄道(千葉県)の2.2kmです。

第三種鉄道事業者で最も短いのが、なんと鉄道会社ではなく和歌山県です(県が路線を所有しています)。南海和歌山港線の一部(旧久保町駅~和歌山港)の2.0kmになります。和歌山県が路線を所有し、南海電鉄が運営している路線です。いわゆる上下分離方式というやつですね。今回は、その2.0kmの旅になります。

今回の記事は2022年春に体験したものですが、特急サザンの車両は以前の写真も含まれています。

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南海本線:大阪なんば駅から和歌山市駅へ

南海和歌山港線の起点となる和歌山市駅への所要時間は、大阪のなんば駅から南海本線の特急サザンで約1時間です。座席指定券520円で席を確保することができます(無料の自由席車両もあります)。

特急サザンは、サザン・プレミアムの車両と、旧型車両の2種類があります。

サザン・プレミアム12000系は、2011年に運用開始された車両です(2011年から2016年に製造)。指定席のシートはまだまだ新しく感じられます。

ドリンクホルダー、コンセント、テーブルを完備。プラズマクラスターも備わっています。これで520円は優秀です。

混雑時でも1人利用で隣にひとがいることはあまり無いですし、後ろに人がいることも少ないです。特急サザンの席は事前予約する人が少なく、ほとんどの場合、当日購入で1列おきに指定くれます。とても素晴らしいです。

サザン・プレミアムではない車両(10000系)だと、ちょっとはずれをひいた気分ですね。特に1985年から1989年に製造された車両は、テーブルも無くてドリンクホルダーのみです。一応、事前にどの車両がくるか調べることは可能です。

2019年12月23日から2022年5月31日まで、10000系サザン車両がHYDE仕様でラッピングされています。和歌山市ふるさと観光大使である、ロックバンド「L’Arc〜en〜Ciel」のヴォーカルHYDEさんとのコラボ車両です。もうすぐHYDE車両も終了ですね。

1時間くらいで南海本線の終着駅である和歌山市駅に到着です。2020年6月に新駅舎が改装オープンしたばかりです。和歌山の玄関口駅のひとつで、駅ビルにはレストランなど多くの店舗が入居しています。逆に、駅構内にはほとんど店舗はありません(改装前には南海そばの店舗もありました)。

最近はやりの、駅と一体化した市民図書館です。中軽井沢駅など、日本各地で図書館と駅が一体化しています。さらに、蔦屋やスターバックスと図書館が一体化しています。これも、奈良コンベンションセンターなどでみられる形態です。

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南海和歌山港線に乗る

和歌山市駅の駅構内に戻ります。和歌山市駅から、南海本線、南海加太線、南海和歌山港線、JR紀勢本線がでています。和歌山港線は和歌山市と和歌山港を結ぶ1駅区間しかありません。

南海本線の特急サザンの発着は、ほとんどが4番線になります。和歌山港ゆきの電車は7番線から発着するので、跨線橋を渡る必要があります(南海本線直通の特急や急行の場合は5番線発着です)。

6番線と7番線は同じ側にありますが、両者のあいだに車両止めがあります。6番線はなんば側、7番線は和歌山港側に発着します。反対側の5番線は、和歌山港線から南海本線への直通列車が発着することができます。

次の駅が、いきなり終着駅の和歌山港駅です。和歌山市駅ー和歌山港駅間のうち、途中(旧久保町駅)までが南海電鉄の路線で、その先が和歌山県の所有路線です。所有路線に関しては、駅構内のどこにも表記されていません。

南海電鉄2200系電車です。もともと22000系として1969年に製造された車体で、改造しているとはいえ50年以上使用されています。同時期の車両では解体されたものもあり、南海電鉄の車両の中では最古参の車両に近い存在だと思います(あんまり詳しくないので、たぶんです)。

車内はロングシートタイプで2両編成です(和歌山港駅構内で撮影)。50年選手としては比較的きれいな車内です。和歌山市駅と和歌山港駅を普通列車として行ったり来たりしています。

和歌山市駅の7番線から和歌山港方面を眺めています。和歌山市駅は車両基地があるので、線路がたくさん分岐しています。

出発時刻になりました。車内に入ります。

久保町駅跡と分界点

和歌山港線は単線路線です。出発してすぐに、橋の下を通ります。和歌山市の北にある紀の川にかかる紀の川大橋です(写真右手の川が紀の川の一部)。写真の矢印のあたりに、2005年まで久保町駅という駅のホームがありました。

この駅跡付近が、和歌山県と南海電鉄の所有路線境界(分界点)になります。

なんとなくホーム跡が残っています。ここからが今回のメイン「真の日本一短い鉄道」です。

列車はさらに南へ向かいます。

築地橋駅跡

さらに進むと、またホーム跡が見えます(写真は和歌山市駅方面向きに撮影)。こちらも2005年に廃駅となった築地橋駅の遺構になります(写真の線路の右側)。

築港町駅跡

もう少し進むと、また駅跡があります。築港町駅跡です。もともと和歌山港はここにあったので、和歌山港駅として開設された駅ですが、新和歌山港開港とともに築港町と駅名が変わったそうです。

こちらはホーム跡すらなく、線路の敷地が少し広いことだけが駅があった名残です。

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和歌山港と周辺散策

やがて路線は高架になり、和歌山港駅に到着しました。電車の所要時間は4分ですが、旧久保町駅からだと3分くらいでしょうか。2.0kmの日本一短い鉄道旅が終了です。

和歌山港駅は終着駅で、乗り換える路線もありません。

1面2線のホームで、線路の端には車両止めがあります。

階段でコンコースに降りましょう。エスカレータもエレベータもありません。

特急停車駅ですが無人駅です(2012年に無人化)。構内にはなにもありません。右に進むと徳島へ向かう南海フェリー乗り場につながります。駅正面は左の方です。

フェリー乗り場には高架歩道でつながっています。

駅正面に出てみました。何もありませんし、だれもいません。ほとんどの乗客はフェリー乗り場に向かいます。

もともと徳島へのフェリー連絡路線でしたが、1998年に明石大橋開通した後はそちらを使う方が多く、フェリーも乗客が減ってきています。現在のフェリーは片道2時間で徳島との間を運航しており、トラック運送が主な乗客です。2002年に徳島まで1時間で結ぶ高速船が廃止されたため、フェリー便数は当時の半分以下になっています。

駅前にロータリーはありますが、バスはほとんど来ません。南海和歌山市駅行きとJR和歌山駅行きが3時間に1本程度です。

電車も1時間にかろうじて1本あるくらい。電車の乗りつぶし旅で来た場合は、1時間待っているとすることが無くなってしまいます。乗ってきた電車は、到着して6分後に折り返し便となります。1時間滞在するか、6分間で帰るか。乗りつぶし派には難しい選択肢です。

往路は交通系ICカードを使ったので、帰りはキップを購入してみました。片道160円で、先ほどの和歌山市駅まで行けます。

ちなみに、和歌山市駅に直結するカンデオホテルズ南海和歌山の大浴場では、紀の川河口付近の絶景を楽しむことができます。時間帯が限られていますが日帰り入浴も可能で、是非ともおすすめします。

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和歌山港駅から廃線跡をたどる

実は、2002年まで、和歌山港駅以南にも路線がありました。この路線が廃線になったからこそ、日本一短い鉄道になっています。

和歌山港駅の南側に高架跡が残っています。

さらに南に向かうと、砂利だけ残されたエリアが見えます。向こう側の敷地は、花王の工場です。

線路跡沿いにある道をさらに南にすすむと、小高い丘が並行して続いていて、遊歩道のようになっています。

水軒堤防と呼ばれているそうです。この辺りは海の傍ですからね。

ずっと南に進み、和歌山港駅から2.6km南下しました。ドッグランの施設があります。

その南側は広場になっています。この辺りが水軒駅の跡地になります。1面1線の無人駅だったそうですが、側線をいれると3線あり、駅構内はある程度広さがあったようです。

突き当りはブロック塀になっていて行き止まりです。向こう側は川になります。

奥の壁です。脇にある道路の向こう側には、養翠園とよばれる紀州徳川家の庭園があるそうです。

水軒駅の跡地は多目的ひろば(水軒公園)として利用されているようです。

水軒堤防の一部が移設されてここに保存されています。

周辺には建物がほとんどありません。目の前の橋を渡った向こう側には住宅地がありますが、もともと1日2本しか運行していなかった電車路線ですから、利用客はほとんどいなかったことでしょう。

廃線跡の旅はここでおしまいです。興味のある方は歩いてみてもいいですが、帰る手段も徒歩になるので、意外に大変です。並行区間にバスはありませんが、水軒駅跡の目の前の橋を渡ると、バス停があるので(徒歩8分程度)利用してもいいかもしれません(1時間に1本くらいしかないのであらかじめ下調べして利用しましょう)。

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まとめ

2022年の日本一短い鉄道の旅(南海和歌山港線)でした。旧久保町駅~和歌山港駅の3分間の旅で、海辺のローカル線を楽しむことができます。

さらに水軒駅までの廃線跡も辿りましたが、これは大変でしたね。車を用意したほうがいいと思います。線路跡もホームもほとんど残っていないので、少し物足りなさを感じてしまいました。今回で日本一短い鉄道シリーズは終了です。

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